2010年9月19日日曜日

できないことへの努力をしいる〜松浦弥太郎著『最低で最高の本屋』

最低で最高の本屋 松浦弥太郎著

序文から深く考えさせられる文章に出会いました。
(P10)
「僕らが受けた教育は点数を競い合い、できないことへの努力をしいられ、常に前へ前へと背中を押されるものでした。~」



【~できないことへの努力をしいる~】
確かに学校にはそういう部分があります。
学習においてつまづいている所があれば、そこを何とかクリアしていかないと次に進むのが難しくなってしまうため、結果的に子ども達に「できないことへの努力をしいてしまう」のです。
更に文章は続きます。
「~その道の先にあるものは一流と呼ばれる組織に永久就職することでした。親から言われた「いい会社にはいりなさいね」という言葉。
それが最も良しとされた、いわゆる幸せになる方法という道でした。では、その幸せになる方法はどのくらい選択肢があるのだろう。
世間一般の視野で社会を見回すとあまりにも少ないことに気づきます。
そしてそのほとんどが学歴というハードルを越えた者だけに与えられた選択肢ばかりです。~」
誤解のないように言っておきますが、私も松浦さん同様「いい会社に入ること」を否定するつもりは全くありません。
それを達成するために、どれだけの努力と忍耐が必要か。
それによって培われた人間性はその人の人生を豊かに彩る大切な一つだと考えます。
ただ、私がこの文章に共感するのは、「学ぶ理由が、いい会社に入ることで得られる幸せに偏っている」という部分です。
学び=できないことをできるようにする努力をしいるもの
では無いはずです。
新しい事を学ぶことで、自分の視野が広がり、ワクワクして、もっと学びたくなる。
そんなサイクルがまわっていくのが私の夢です。
【プチ自伝】
本書には、松浦さんが高校を中退したワケ、そして、ケルアックの『路上』に憧れてアメリカに渡り、アメリカかぶれになって日本に戻ってきた事。
自分より年上の人と付き合って、ちょっと生意気になった自分を客観的に捉えている所を読むと、
「ああ、自分もそんな頃があったな」と素直に思えます。
松浦さんが自分の心が指し示す興味に素直に従い、そこでコツコツと学び続けた努力は、
「できないことへの努力をしいる」とは違う本来の学びの姿があります。
義務教育期間に、「好きなことをトコトンやる」事をこのまま当てはめてしまうことに、
私は疑問を感じます。
私は、子どもが小さいうちは「つべこべ言わずにまずはやってみようよ」
とこれまで通り子ども達を応援していきます。
でも、私の中心部分には「この子の得意なこと、トコトン好きなことって何だろう。それを伸ばすには学校で何ができるだろう」と試行錯誤する気持ちを常にもち続けたいのです。
そして、子ども達がやがてでていく社会には、学歴以外の幸せになる選択肢が当たり前にあり、
学びたいときにいつでも学ぶことができるシステムが当たり前のようあることを願っています。
それと同時に、大人の意識の中に「学歴以外の幸せ」を受け入れる
成熟した感覚を根付かせていくことも大切だと思います。
そういった感覚をこの「最低で最高の本屋」から感じとって欲しいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿